研修医宿題
Respiratory index(RI)の応用
原田 憲一
肺胞気動脈血酸素分圧格差(A-aDO2)は次の式で表される。
A-aDO2 (mmHg)=PAO2-PaO2=(760-47)×FiO2-PaO2-PaCO2/RQ
(ただし,肺胞内の飽和水蒸気圧=47, RQ(呼吸商)=0.8とする) |
A-aDO2は、息を吸って肺胞内酸素分圧と動脈血酸素分圧の差をあらわしている.一方,RIは次の式で表される。
つまりRIは、PaO2を100mmHgとするのに何割の酸素をロスしたかを求めている
My RI
Room air(FiO2=0.21)であればPaO2の標準値は年齢によって推察される。
(臥位)PaO2=100-0.4×年齢
(座位)PaO2=100-0.3×年齢
ここで,私(26歳)のRIを求めてみることにする。
PaO2 = 100-0.4×26 = 89.6 mmHg
PaCO2= 40 mmHgとすると,
A-aDO2=(760-47)×0.21-89.6 -40/0.8=10.13mmHg
RI = 0.113RIの正常値
A-aDO2の正常値は非喫煙者で10mmHg以下、喫煙者で20mmHg以下であり、50歳以上の人では20mmHgを上回る。RIの正常値はPaCO2の値を40mmHgとすると、PaO2の正常値が80~100mmHgであることより,RI<0.25となる。RIの臨床的有用性(RIからFiO2の値を決定する。)
術後、ICUなどでは患者の呼吸管理の評価を行なう上で血液ガス値を測定するが、それによって得られるPaO2だけで評価するのは理論的でない。なぜなら、PaO2はFiO2、肺胞換気量、シャント率、換気血流比などの影響を受けるからである。
そのため、異なった値のFiO2におけるRIを指標とすることが推奨されている。また、RIノモグラムはRIの値よりFiO2の調節を行なうことができる。
症例検討
[症例1]
当院当科にて右肺部分切除術を施行した症例(62歳、男性)の入院中のRIの変化を表とグラフにしたものである。
術後3日目room airでPaO2の値が63.6mmHg,RIの値が0.574である。
PaO2を90mmHgに維持するためにはFiO2をどの位に設定すればよいであろうか。このような場合にRIノモグラムを用いるとFiO2を0.27程度に設定すればよいことがわかる。ちなみに鼻カニューラで2L/分O2投与すればFiO2が0.27に維持できる.
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A-aDO2 |
O2条件 |
FiO2 |
PaCO2 |
PaO2 |
RI |
Admission |
19.105 |
room |
0.21 |
40.5 |
80 0 |
0.238812 |
Post operation |
142.2 |
50%12L |
0.4 |
45.2 |
86.5 |
1.643930 |
1 POD |
130.625 |
50%12L |
0.4 |
51.1 |
90.7 |
1.440187 |
1 POD |
49.15 |
40%8L |
0.3 |
47 |
106 |
0.463679 |
2 POD |
60 |
40%8L |
0.3 |
43.2 |
99.9 |
0.600600 |
3 POD |
36.505 |
room |
0.21 |
39.7 |
63.6 |
0.573977 |
4 POD |
40.305 |
room |
0.21 |
38.5 |
61.3 |
0.620932 |
5 POD |
39.305 |
room |
0.21 |
37.7 |
63.3 |
0.620932 |
Discharge |
29.605 |
room |
0.21 |
40.9 |
69.0 |
0.429057 |
【症例2】
インスピロン・マスクにてO2流量8L/分では推定FiO2は0.4となっているが、果たして本当にその通りなのであろうか。本来、インスピロン・マスクは高流量マスクであり、患者の呼吸状態に影響を受けにくいものである。そこで、ほぼ同じRIのときのインスピロン・マスク8Lとroom airとでFiO2を比較してみた
|
A-aDO2 |
O2条件 |
FiO2 |
PaCO2 |
PaO2 |
RI |
admission |
17.08 |
room |
0.21 |
43 |
78.9 |
0.216477 |
after ope |
49.775 |
40%8L |
0.3 |
47.7 |
104.5 |
0.476316 |
#1 |
57.2551 |
40%8L |
0.3127 |
45.2 |
109.2 |
0.524314 |
#1 |
33.155 |
room |
0.21 |
42.7 |
63.2 |
0.524604 |
上記の表のように術後1日目、インスピロン・マスク8LにてO2投与中の血液ガス測定にてRI=0.524であった。Room airにして30分後にも血液ガス測定を行い、このときのRIの値もほぼ同じであると思われるため、
{(760-47)×FiO2-42.7/0.8-63.2}/63.2={(760-47)×0.21-45.2/0.8-109.2}/109.2
この方程式を解き,FiO2=0.3127
したがって、インスピロン・マスク8LではFiO2=0.31程度だと思われる。 この差は患者の呼吸状態、マスクのずれなどによるものであろう。
RIノモグラム
参考文献:内科レジデントマニュアル.医学書院
June 24, 2002
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