研修医宿題
自然気胸の胸膜癒着療法
大迫 智
1、胸膜癒着療法の歴史
自然気胸の再発に対して、胸膜を癒着させ胸腔を閉鎖すれば気胸の発症は防止できると考えられた。
1930年 Dxtrose胸腔内注入(癒着療法の始まり、Spenglerによる)
1935年 タルク
1936年 自家血
1961年 リピオドール
1978年 フィブリン糊
1979年 テトラサイクリン
1980年 Nocardia-CWS
1987年 OK432
1990年 ブレオマイシン
2、癒着療法の機序
(1)胸膜を化学的に刺激し、胸膜炎を惹起
タルク、テトラサイクリン、OK432
(2)それ自体に接着作用
フィブリン糊
3、胸膜癒着剤の種類
(1)タルク(Talc)
(2)ブロンカスマ・ベルナ(Broncasma-Berna)
気道内常在菌の多価ワクチン
アレルギー性胸膜炎を惹起し、粘稠な胸水により胸膜が癒着
(3)N-CWS、BCG-CWS
N-CWS=Nocardia rubra-Cell Wall Skeleton
免疫療法剤で、アレルギー性胸膜炎を惹起
(4)ブレオマイシン(bleomycin)(ブレオ)
抗癌性抗生物質
胸膜肥厚作用あり
(5)テトラサイクリン(tetracycline)系
Tetracycline;アクロマイシン
Minocycline;ミノマイシン
Doxycycline;ビブラマイシン
胸水中のI型コラゲナーゼを抑制し、癒着を促進
(6)OK432(ピシバニール)
ストレプトコックス・ピオゲネス(A群3型)Su株ペニシリン処理凍結乾燥粉末
単位;KE(1KEは凍結乾燥粉末2.8mgに相当、乾燥菌体として0.1mgに相当)
1回5~10KEを使用
炎症細胞・炎症性サイトカインの増加
ベンジルペニシリンを含むため、ショックに注意
最も強い癒着作用を持つ
(7)フィブリン糊(ベリプラスト_、ボルヒール_)
A液=フィブリノゲンをアプロチニンで溶解
B液=トロンビンを塩化カルシウムで溶解
A液・B液を直前に混和して噴霧
フィブリン生成過程を利用して組織の接着・閉鎖を行う
アプロチニンは牛肺を原料とするのでアレルギーに注意
参考文献
大畑正昭 自然気胸 -最近の治療法- 克誠堂出版 2001年
大畑正昭 自然気胸 克誠堂出版 1982年
治療薬マニュアル2002
July 27, 2003
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